初期ウ蝕に対する臨床的なアプローチの基本は、機械的な切削処置ではなく、いかに再石灰化を促すかに尽きる。そして再石灰化処置の基本は、各種イオンを含む唾液によるエナメル質の脱灰-再石灰化バランスを最大限に活用することである。
すなわち、唾液の利点を生かし、欠点を補うような処置が必要となる.フッ化物やCPP-ACP、Pos-Ca等の再石灰化促進成分を使用する際にも、ベースには唾液が介在することを忘れてはならない。
唾液の利点 唾液の欠点
・カルシウム・リンイオンの過飽和溶液
・pH緩衝作用
・水洗作用・夜間は分泌量減少
・フッ素イオン濃度は低濃度
また、初期ウ蝕に対するアプローチで重要なことは、歯質脱灰抑制と再石灰化促進をプロフェッショナルケアとセルフケアの両面より行うことである。
PMTCとセルフケアは手段や頻度は異なるが、プラークを除去し、フッ化物で歯面強化するという目的は同じである。
フッ化物配合歯磨剤の効果的な応用法は、1日2回フッ化物配合歯磨剤を用いて歯磨きを行い、その後出来る限り少量の水で漱ぐ程度に留めることである。
in vitroの研究によると、再石灰化に必要な時間は、脱灰期間の3倍以上の期間が必要であると報告されている。
就寝期間中は最も適した長期再石灰化期間であることを健康教育として指導する必要があるとの意見もある。再石灰化を促進させるためには、可能な限り日常的に再石灰化が起こりえる環境を口腔内に構築することが重要である。
現在、再石灰化促進成分を含むガム等が開発されいるので、単なる日常ケアのみならず、そのような嗜好品もうまく取り入れることが継続の一助となる。
参考
保存修復学21、第3版、永末書店
初期齲蝕のマネージメント、クインテッセンス 他