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高齢者・有病者 >> 口腔ケア症例

歯科臨床インフォメーション 大分県地域リハビリテーション研究会にて

概要

国東市民病院(大分県) 歯科衛生士 岡林志伸

今回は総合病院の歯科という立場より、全身状態の改善と口腔の改善が得られた結果、住み慣れた地域での生活を実現できた症例を報告いたします。

国東市民病院では昨年の4月よりNSTが稼動しています。
医師・看護師・理学療法士・検査技師・言語聴覚士・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等の多くの職種がカンファレンスを行い、それぞれの専門性を生かしながら活動しています。
今回ご紹介する症例はNST活動の中での患者さまです。
87歳、男性、既往歴は慢性閉塞性肺疾患で、入院病名は誤嚥性肺炎です。
自宅で訪問看護やヘルパーの派遣と妻による介護を受けていましたが、肺炎の悪化のため入院となりました。

入院時の意識レベルは、閉眼しているが呼びかけには返答する状態でJCSではⅡ-10程度(普通の呼びかけで目を開ける覚醒状態、ただし指示に対する反応や言葉に間違いが多い状態)でした。
SPO2は86~90%と低く、自力での痰の喀出は不可能でした。
また、炎症反応を表すCRPも21・9と高値でした。
入院5日目くらいからSPO2が95%と安定してきたので、NST依頼と言語聴覚士による嚥下機能評価が行われました。

言語聴覚士による一回目の嚥下評価

口腔器官の状態⇒左右差無し、安静時は良好
口唇
開閉のみ可能
挺舌は可能、その他の緻密動作は不可
咀嚼
不可
ふくまらし、すぼめとも不可
RSST、水のみテストは意識レベル低下のため施行できず
《訓練プログラム》
   ①口腔器官の他動運動
   ②アイスマッサージ
   ③覚醒レベルアップ目的にギャッジアップしての声かけ

(写真1)
在宅では妻と同じメニューを食べていましたが、評価時点では傾眠傾向が強く、誤嚥の危険性が高いことから摂食困難と判断されました。
入院6日目から、経口摂取に向けて、言語聴覚士による嚥下訓練と口腔改善のために歯科衛生士の専門的口腔ケアと看護師による口腔ケアが開始されました。初診時の口腔内です。(参照:写真1、写真2)
歯が17本残存しており、上顎には欠損部を認めましたが義歯の作製歴はありません。
上顎には乾燥した付着物と痰がはりつき、舌には舌苔が厚く堆積。
残存している歯には歯垢が多量に付着していました。
歯肉は赤く腫れ、刺激による出血がみられました。

(写真2)

歯科衛生士による口腔ケアの実施手順


乾燥があるため最初に保湿剤(バイオエクストラマウスジェル@ウェルテック)を塗布し、付着物を軟化し除去。
特に薬剤や歯磨剤は使用せずに水のみで歯ブラシを用いてブラッシング。
その後、うがいができないため口腔内のふき取り(吸引付きくるリーナブラシ@オーラルケア&巻綿子)を行いました。
当初はふき取りのみでしたが、意識状態が安定してくるにしたがって、ケア後はうがいを促すように指導しました。
ケア後には保湿のために保湿剤を塗布しました。

初診時のケアの際、「あれ、あれ、おかしいなあ。なんかようなった。」とケア後に独り言を言われていたのが印象的でした。
おそらく、痰等が張り付き息苦しかったのがよくなったのではないかと考えます。

入院16日目の口腔内です。
再度、言語聴覚士による嚥下機能評価が行われ、口腔機能に多少不十分な面はあるが、嚥下は可能と判断されました。(参照:写真3)

(写真3)

言語聴覚士による二回目の嚥下評価

入院より16日目に再度、言語聴覚士による嚥下評価が行われ、嚥下状態は良好と判断されました。
口腔器官の状態⇒左右差無し、安静時は良好

口唇
開閉可能。突出・横引きも不十分だが可能
挺舌は可能、左右運動は可能、舌尖挙上は困難
咀嚼
可能
ふくらまし、すぼめとも不十分

入院3週間後より3食のミキサー食が開始されました。
入院5週間後にはCRPの値も0.7となりました。
入院7週間後より介護療養型病棟へ転棟され、食事も主食は全粥、副食は一口大のキザミへレベルアップとなりました。SPO2も98%程度で安定しました。
口腔内のケアは介護の手を借りずに、自分で歯ブラシを持って自立できるようになり、痰などの貯留が無くなりました。

リハビリも積極的に行い、食欲も増進し、本人の「みかんとおせんべいが食べたい!」との意思で、義歯の作製が開始されました。
その後、義歯が完成し、食事も常食になり自宅近くの施設へ退院となりました。

この症例は、誤嚥性肺炎を繰り返し、今回の入院で摂食の再開が困難であれば、経管栄養にならざるをえないと考えられていました。
しかし、口腔内の状態の改善にともなって全身状態も回復しました。
つまり、口腔ケアを行い、口腔環境を整えれば、食べられる環境になり嚥下状態や肺炎などの全身の状態も改善してくると思われました。
これには、他職種とのチームアプローチにより効果的でした。
この症例のように他職種が関わるチームアプローチによって、住み慣れた土地での生活を可能にすることこそ、地域リハビリであると考えます。
これからもこのような症例が増えることを願ってやみません。

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