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口腔湿潤剤を用いた口腔ケア手法

口腔湿潤剤を用いた口腔ケア手法

研究キーワード 口腔湿潤剤を用いた口腔ケア手法
著者・所属 菅武雄、木森久人、小田川拓矢、山岡創、千代情路
奥野典子、金子夏樹、石川友香子、飯田良平、中谷敏恭、森戸光彦
出典 老年歯科医学 第21巻,第2号,130~134
アブストラクト 口腔ケアへの関心の高まりは、介護保険制度に口腔機能の向上が組み込まれたことにより急速に発展しているように思われる。しかし看護や介護の現場における口腔ケアにはいまだ多くの問題が残されているのが現実である。特に重度の要介護高齢者や急性期の意識障害を伴う患者のケアについては有効な手法の開発が開発されつつあるが1. 2)まだ不足している3)。
意識障害があり、気管切開、胃ろう造設を伴うような全身状態の患者では口腔機能が著しく低下する。舌や口腔周囲筋の活動が止まり、唾液の分泌も著しく低下して口腔乾燥状態に陥る。さらに常時の開口を伴う場合は乾燥状態も進行するのでケアの難易度はさらに高まる。
これらの口腔乾燥状態が改善できなければ、看護師による口腔清拭やケアワーカーによる口腔清潔も奏効せず、口腔ケアを十分に提供できない。結果的に誤嚥性肺炎の魔の手からクライアントを守ることが難しくなってしまう。
そしてむせの存在により、さらに事態は深刻になる。つまり、誤嚥性肺炎防止ということで主治医等から経口飲水が禁止されてしまい、結果的に口腔ケアも事実上実施不可能の場合すらある。
このような場合に必要なのは口腔環境を守るための、いわば口腔ケアの前提条件としての保湿と、廃用症候を防止し口腔機能を向上させるためのマッサージ等の刺激、口腔衛生管理としてのプラークコントロールを安全に行う手法である。
われわれは、このような条件下での口腔ケアに湿潤剤を応用する手法を検討している。本稿では全介助による口腔ケアが必要とされる場合に有効と思われる湿潤剤を応用したケア手法について紹介する。
研究概要 アセスメントとプランニングの要点
われわれが日常的に利用している口腔ケアプランニング用のツールは、口腔ケアの自立度に応じた介入レベルを盛り込んだものである4)。湿潤剤を応用した口腔ケアはなかでも高度介入に分類される。これは全介助の場合にしか湿潤剤を用いたケアを行わないということではなく、最大限に効果を発揮するという意味である。

湿潤剤を応用した口腔ケアのアセスメントの要点は、一般的な口腔アセスメントに加え、口腔乾燥の有無、自力合嗽の可否、残存歯の有無を考慮することにある。
口腔乾燥があれば、常時の保湿がケアの前提条件になる5)。多くの症例で口腔乾燥が認められるので、口腔ケアは保湿からはじまるといえる。保湿により堆積してくる剥離上皮4)の除去が容易になり、舌の可動性も増すことが期待できる。またマッサージ等の口腔機能の向上を考える時にも必須条件になる。
自力で含嗽が不可能な場合には口腔ケア時に咽頭に水を落下流入させてはいけないので、体位の制御(主に側臥位)で対応できるかを検討する。それが困難な場合には咽頭への落下流入を防いだケア方法の検討が必要である。このような場合に湿潤剤を積極的に応用したケアが有効である。そして、残存歯がある場合には、さらに介入度が高まる。
残存歯にはブラッシングが必須であるが、この時にも咽頭に落下流入させない方法で行わなければならない。この要求に対してもブラッシングを行う時に湿潤剤を応用する方法は安全で確実な口腔ケアに有効であると考えられる。
ブラッシングに湿潤剤を応用する目的は、咽頭に水や湿潤剤を落下流入させないことであり、ブラッシングで遊離させたプラークは湿潤剤と一緒に回収するという考え方である。このときに給水・吸引ブラシ6)が併用できればケアの質と効率は一段と向上する。
プランニングとしては、ケアの回数を考える前に、一日24時間をケアの提供のサイクルと考える。常時の保湿と、ケア時の粘膜と残存歯のケアのバランスが重要である。湿潤剤はケア時のみ用いるのではなく、ケアとケアの間の時間も継続した保湿というケアを提供していると考える。

経口摂取している場合には、食後が口腔ケアのタイミングであるが、経管栄養の場合は口腔乾燥と残存歯のアセスメントにより間隔とケア内容の検討を行うことになる。

口腔ケアに適した湿潤剤

介助による口腔ケアに用いる湿潤剤は水溶性で塗布と除去が容易であることが望ましい。この点において油脂成分の含有は望ましくないといえる。また、甘味料やハッカ等は不要である。保湿を行う場合には長時間応用を前提とするので、でんぷんが含まれているものは適さず、特に残存歯を有する場合にはう蝕誘発を考慮すると使用できない。粘膜の性状や色調を確認するために、無色透明であることも要件である。
抗菌薬や抗菌成分の添加については議論があるが、われわれの研究や経験4)からは急性感染症がないという条件下で、保湿を含めた口腔環境の改善が達成できれば日常のケアに用いる湿潤剤に抗菌薬等の添加は不要であると考えている。
介助による口腔ケアに用いる湿潤剤は、専門家(歯科医師)により材料設計され、安全でレオロジカルな裏付けのあるものを推奨したい。

粘膜に対する湿潤剤の効果

口腔乾燥を有する場合の全介助による口腔ケアは非常に手間と時間を要するものである。剥離上皮の除去にピンセット等を用いて毎日20分を要している例もあった。また乾燥状態の剥離上皮の除去は出血や疼痛を伴い、そのことでケアワーカーでは担当できず、看護師の大きな負担になっている場合も多く目にする。
常時の保湿はケア時の剥離上皮の除去を容易にし、ケアの時間を短縮させ、剥離上皮の除去に出血や疼痛を伴うこともなくなる。術前に1444CFU検出されたCandida albicansが湿潤剤を用いたケアで短期間に検出限界以下にコントロールできた例もある4)。
また摂食・嚥下リハビリテーションの間接訓練としての口腔ケアにも湿潤剤の応用は有効である。

残存歯に対する湿潤剤の効果

ブラッシングに湿潤剤を用いることで、咽頭に水や湿潤剤を落下流入させないことが期待できる。湿潤剤を歯磨剤に準じて用い、ブラッシングで遊離させたプラークを湿潤剤で保持し、湿潤剤ごと口腔外に回収するという考え方である。水分やプラークを咽頭落下流入させずにプラークコントロールすることが可能である。
実験結果では、給水・吸引ブラシを併用すれば、歯ブラシのみ使用時に比べて有意に所要時間が短く、効率的であることが判った。また、湿潤剤を使用することで、ブラッシング時にプラーク等を咽頭に落下流入させず、安全であることが判っている。

湿潤剤を用いた口腔ケアの実際 湿潤剤を用いた口腔ケアには大きく分けて2つの使い方、すなわち口腔粘膜のケアと残存歯のケアがある。

1.口腔粘膜のケア(機能的口腔ケア)
粘膜のケアは、湿潤剤を口腔粘膜に塗布することで乾燥から守り、保湿されていることが前提条件である。

1)保湿方法の一例
(1) スポンジブラシを水で湿らせる。コップの水に漬けた後、軽く絞るか、コップの縁で2~3回振り当てて水気を切る。湿らせる目安はスポンジから水が垂れない程度である。
(2) スポンジブラシに湿潤剤を適量取り出す(写真など)。
垂れないようにスポンジブラシを回しながら巻きつける感じで2cm程を用いる。

(3) 最初に口唇全体に塗布する。このことでケア時に口唇を伸展しやすくする。
(4) 口蓋、頬粘膜、舌などの口腔粘膜全体に塗布する。
数時間毎に塗布すると、保湿効果が高まる。スポンジブラシは回転させるように用いると効果的である。

2)剥離上皮の除去方法
常時の保湿をケアの前提とする。
(1) スポンジブラシに湿潤剤を少量取り出す。この時にはスポンジブラシを湿らせる必要はない。
(2) 剥離上皮が乾燥している場合には湿潤剤を塗布して軟化させる。
(3) 剥離上皮を除去してゆく。保湿され、ふやけた部分から、からめ取るようにスポンジブラシを回しながら除去する。スポンジブラシのかかと(エッジ部)も効果的に利用する。
(4) ブラシに付着してきた上皮を水中で洗い取るか拭き取る。
(5) 最後に湿潤剤を口腔粘膜全体に塗布して保湿する。

3)粘膜のマッサージ方法
マッサージを行う時の基本は、口腔粘膜が保湿されていることである。
(1) スポンジブラシを水で湿らせる。
(2) スポンジブラシに湿潤剤を適量(2cmほど)取り出す。
(3) 口蓋、頬粘膜、舌などマッサージを行う場所に湿潤剤を塗布し、後方から前方に向かってマッサージを行う。塗布の際には湿潤剤が垂れないように少量ずつ使う。
(4) 刺激唾液が認められてきたら咽頭落下流入を防ぐために湿潤剤の量を少なくする。

2.残存歯の清掃方法
残存歯の清掃は、湿潤剤を水の替わりに用いてブラッシングを行うことで、咽頭へのプラークや水の落下流入を防止する。

1)ケア方法1 (通常の歯ブラシを用いる場合)
(1) 歯ブラシに湿潤剤を1cm程出す。
(2) 残存歯全体に薄く伸ばすように塗布する。
(3) ブラッシングを行う。ブラッシング方法は、ストロークの小さい横磨き(スクラッピング法など)が通している。補助的清掃器具(歯間ブラシ、フリーアングルブラシなど)を併用するのも効果的である。
(4) ブラッシングが終わった歯の湿潤剤を口腔内から回収する。回収方法は、ブラシで湿潤剤をすくい取り、コップの水で洗うかペーパータオル等で拭き取る。

2)ケア方法2 (給水吸引ブラシを用いる場合)
(1) ブラシに湿潤剤を1cm程出す。
(2) 残存歯全体に薄く伸ばすように塗布する。この時はまだ給水機能、吸引機能は使用しない。
(3) 吸引機能の電源を入る(吸引開始)。
(4) 残存歯のブラッシングを行う。
(5) ブラッシングの終わった部分に給水を行いながら湿潤剤を吸引除去する。

以上、簡単に口腔湿潤剤を応用した口腔ケア手法を紹介したが、現場で日々努力されているスタッフのお役に立つことができれば光栄である。
本論文は、口腔ケア小委員会の企画によるものである。

謝辞
本研究は平成16年鶴見大学歯学会助成金により行われた。

1)戸原玄、下山和弘:簡便な評価に基づく口腔ケア、老年歯学、 20 : 227-230、 2005.
2)渡辺裕、山根源之、外木守雄、蔵本千夏:気管挿管患者の口腔ケア、老年歯学、 20:362-369、2006.
3)塚本容子、伊藤加奈子:肺炎防止のための口腔ケアの研究の動向-2000年から2005年の日本と海外の研究論文の比較から~、北海道医療大学看護福祉学部紀要、 12 : 37-44、 2005.
4)菅武雄:口腔ケアハンドブック、 p.73-74、日本医療企画、東京、 2002.
5)菅武雄、中谷敏恭、森戸光彦:湿潤剤を応用した要介護高齢者の口腔ケア、老年歯学、 19 : 13-15、 2004.
6)中谷敏恭、菅武雄、森戸光彦:給水・吸引ブラシ「ビバラック」の特徴、老年歯学、 16:379-382、 2002.

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