総義歯の表面は
・咬合面
・研磨面
・粘膜面
に分類できるが、これら3つの面と生体側の要因が相まって義歯は制御され、機能している。印象採得はその中の粘膜面と研磨面の形を規定するための操作である。
印象は、床縁設定をする筋圧形成と床下粘膜部の最終印象に分けられる。
義歯により、歯の喪失により失われた歯槽骨・軟組織を補う必要がある。すなわち、組織の吸収量が大きいほど義歯床縁の幅が厚くなる。印象採得時にこの吸収量を辺縁形成により、義歯床縁の幅として補償する。
例:
吸収が進行した症例では、下顎に対して上顎の歯列弓が小さくなるが、口腔前庭の幅を十分に厚く印象採得すれば、吸収の大小に関わらずに床の外形は変化しない。
義歯床内面に対向する顎堤骨は、歯槽頂部で硬い顎堤粘膜、辺縁部では軟らかい歯槽粘膜で成り立っている。
【●顎堤形態が良い場合】
被圧変位性の低い硬い顎堤粘膜が十分に存在する。そして義歯は、ガラス板とガラス板の間に水を一滴たらすとガラス同士が接着するように、義歯床内面と堅固な顎堤粘膜の隙間に唾液が一層介在した状態で顎堤に接着する。
このため、顎堤の良好なケースでは辺縁封鎖を重視しない小さな義歯でも、義歯床内面の適合と唾液の粘稠性で義歯は顎堤に弱く吸い付く。
【●顎堤条件が悪化している場合】
義歯床縁部に対する辺縁封鎖のテクニックが必要になる。
義歯床辺縁に粘膜がからまるように封鎖する。粘膜はその本来の可塑性によって、義歯の辺縁全周に接触し、床縁とそれに接する粘膜との間に必要な張力を生む。
【義歯における吸着】
安静時の義歯は、顎堤の上に唾液を介して停止した状態になっている。そこに、咬合力が義歯に加わると義歯が顎堤に圧下されるため、中にある唾液が外に排出され、その結果、義歯床内部は陰圧になり総義歯の吸着が完成する。
吸着が一度作り上げられると、開口しても義歯は外れず安定した状態を保てる。咬合力が排除され安静な状態になると内部の陰圧はゆっくりと解き放たれ、義歯は唾液上に停滞することを繰り返す。
【辺縁封鎖】
辺縁が可動粘膜によって覆われて封鎖されていると、床縁からの空気の侵入を防ぐことができるため、陰圧が維持され吸着状態を維持することができる。
このとき辺縁はコルベン状にすることで辺縁封鎖が図れる。ただ精密印象を行った後はボクシングを行うため印象どおりの形態になる。
つまり、レトロモラーパッド部を除いた下顎前歯頬側部、臼歯頬側部、後顎舌骨筋窩部、舌下ヒダ部、そして前歯舌側部の床縁が軟らかい組織で密封されてしまえば、義歯内面に空気が入りにくくなり、義歯の維持力を保つことができる。
【参考文献】
コンプリートデンチャーの理論と臨床 クインテッセンス出版 早川 巌
無歯顎補綴治療の基本 口腔保健協会 祇園 白信仁
誰にでもできる下顎義歯の吸着 ヒョーロン 阿部 二郎
総義歯を用いた無歯顎治療 クインテッセンス出版 市川 哲雄
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