前述の通り、セルフエッチングプライマーの開発目的は、3ステップにまたがる工程を減らすことである.
セルフエッチングプライマーとは、エッチングとプライミングを同時に行う事ができるプライマーである.これは、カルボキシル基やリン酸基を持った酸性接着性レジンモノマーをプライマーとして用いることにより、歯面処理材によるエッチングプロセスを代替する.リン酸エッチングと比較してエッチング効果は非常にマイルドであるものの(最近は非常に酸性度の強いセルフエッチングプライマーも登場している)、歯面処理後の水洗が不要なこと、また、象牙質に対するレジンの接着性が飛躍的に向上することなどにより現在広く普及している.ただし、エナメル質への接着を強化するために、エナメル質に対するリン酸エッチングを行った後に、セルフエッチングプライマー処理を行うことも推奨されている.この場合は、象牙質がエッチングされないよう注意が必要である.
セルフエッチングプライマーの大きな利点としては、歯面(特に象牙質面)を脱灰(エッチング)しながらプライミングするため、エッチングされた部分まで接着性レジンモノマーが到達していると考えられる(脱灰される深さ=プライミングされる深さ).また、セルフエッチングプライマーはリン酸と比較して脱灰強さが弱いため(近年は様々な酸性度のセルフエッチングプライマーがある)、象牙質中の硬組織(ヒドロキシアパタイト等)を完全に脱灰しない.リン酸エッチングを行うと表層の象牙質硬組織は完全に脱灰されコラーゲン線維が露出するが、一般的なセルフエッチングプライマーで脱灰するとコラーゲン線維間に半脱灰されたヒドロキシアパタイトが残存する状態となる.近年、この残存したヒドロキシアパタイトがMDP等の接着性レジンモノマーと結合し、レジン−象牙質接着界面の長期耐久性に寄与している可能性が示唆されている.
さらにセルフエッチングプライマーにボンディング材の機能を付加したGボンドやエンジェル等のワンステップシステムが登場してきたが、年々性能が改善されており、近い将来スタンダードな接着システムになる可能性がある.
以下にリン酸エッチングを使用するシングルボンドと象牙質の界面(上図)とセルフエッチングプライマーを使用するメガボンドと象牙質の界面(下図)を示す.樹脂含浸層中(H)の形態を見てもらいたい.シングルボンドにおいては、レジン成分が浸透したコラーゲン線維により構成されているが、メガボンドでは細かい黒い針状構造物が認められる.
この針状構造物が、セルフエッチングプライマーにより溶けきれなかったヒドロキシアパタイトである.
B=Bonding layer
H=Hybrid layer
DT=Dentin Tubular
D=intact Dentin
SP=Smear plug
Koshiro et al. New concept of resin-dentin interfacial adhesion: the nanointeraction zone.
J Biomed Mater Res B Appl Biomater. 2006 May;77(2):401-8.
参考
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