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脱灰と再石灰化について |
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歯質の脱灰と再石灰化について |
蝕が微生物により歯牙細織が局所的に破壊される病的プロセスであることは,周知の事実である。この疾患は,ブラーク中のう蝕原性細菌によって発酵性糖質から産生される有機酸が,歯牙硬組織を脱灰することから始まる。
多くの先進国では,フッ化物やキシリトールなどを効果的に使用することによりう蝕有病率は減少したが,現在でも依然としてう蝕は、大きな公衆衛生上の問題である。さらにう蝕治療の経済的負担は,はとんどの先進国において,冠動脈疾患,高血圧症,脳卒中などのほかの食事関連疾患より大きいとされている。また、う蝕治療から始まる歯科治療の負のスパイラルを可能な限り遅延化させるためにも、初期う蝕に対する対応は非常に重要である。
修復物の寿命に関する論文を俯瞰すると、再修復まで10年以上要した修復物、言い換えると10年以上の寿命がある修復物はほとんど見つからない。また、Eldertonらは多数の成人有歯顎者を対象に治療様式の研究を行い、歯科医師を訪れる頻度の高い患者のほうがより多くの修復処置を受けていると結論づけている。
初期エナメル質う蝕病変の発現にかかわるプロセスについては,すでによく理解されている。すなわち,口腔内が食物の発酵性糖類、特に砂糖へ頻繁に曝露されることにより,歯肉縁上にう蝕原性細菌(Mutans streptococci, Lactobacillusなど)が出現し,バイオフィルムを形成するようになる。これらの細菌は酸産生菌であり、酸耐性菌でもある.つまり,有機酸,特に、乳酸を大量に産生し、口腔内をエナメル質アパタイトの臨界pHより低いpH5前後の状態にすることでアパタイトを溶解させる。
臨界pHは,エナメル質がミネラルの喪失を起こす最も高いpHの値と定義されている。 実際の値はエナメル質結晶周囲の水和層のカルシウムイオンとリン酸イオンの活性によって異なるが、これらのイオン濃度は唾液やプラーク溶液中の濃度と平衡状態にある。唾液およびプラーク溶液中のカルシウムイオンとリン酸イオンの平均濃度や基礎研究の結果より、エナメル質の臨界pHは5.2〜5.5とされている。
しかし、天然歯のエナメル質はカルシウムが乏しく重炭酸に富んでいる。重炭酸含有量が多いほど溶解性が上がるため、臨界pHは高くなる。また、エナメル質にフルアパタイトが存在すると溶解性が下がるため、臨界pHは低くなる。いかにして歯質を強化して、臨界pHを下げるという観点も非常に重要である。
ステファンカーブはあまりに一般的なので割愛させていただくが、参考として代用甘味料による歯垢中のpH変化について示す。
う蝕のプロセスにおいて、プラーク中の細菌により産生される有機酸は、水で満たされたエナメル小柱間隙を介してエナメル質に拡散し、エナメル結晶周囲の水和層のpHを下げる。いったんこのpHが臨界値を下回ると、エナメル結晶のミネラルが失われる。このプロセスを脱灰と呼ぶ。これは酸がリン酸イオンと水酸化物イオンの活性を低下させ、キレート化により乳酸の陰イオンがカルシウムイオンの活性を下げるためである。
臨床的に、エナメル質表層部よりも内部でう蝕が進行した、いわゆる表層下う蝕の状態を見ることがある。このことはエナメル質の表層からう蝕進行の最前線(脱灰最深部)まで水素イオンが到達し、化学反応を起こしていることを意味する。一見、非常に緻密で硬度のあるエナメル質だが、水素イオンレベルの大きさにとっては十分交通が可能であり、水素イオンはエナメル小柱間ならびに結晶間スペースを通って表層から象牙質まで交通可能なのである。
エナメル質からリン酸カルシウムが失われると、初期の表層下う蝕病変(エナメル白斑)が生じる。白色に見えるのは、エナメル質の多孔性が増すことによる光学現象ためである。この段階ではう蝕のプロセスはまだ可逆性であり、カルシウムイオンとリン酸イオン、特に中性のイオン対であるリン酸カルシウム0が表層下病変に拡散し、失われたアパタイトが回復する。このプロセスを再石灰化と呼ぶ。また、このときにフッ素イオンが存在すれば、ヒドロキシアパタイトよりも耐酸性の高いフルオロアパタイト結晶へと回復する。
それでは、最石灰化を促進させることができれば、う蝕マネージメントは達成できるのではないだろうかと考えられる方も多いと思う。しかし、カルシウムイオンとリン酸イオンを含む再石灰化促進溶液の臨床応用は、特にフッ化物イオンの存在下では、リン酸カルシウムの可溶性が低いため成功していない。不溶性リン酸カルシウムは歯面塗布が難しく、歯面に効果的に局在させることができない。表層下病変へ拡散可能なイオンを作るためには可溶化しなければならず、そのためには酸が必要である。
可溶性リン酸カルシウムは濃度が低く、プラークに十分取り込まれず歯面に局在させることもできないため、表層下病変へ効果的に拡散する前に洗い流されてしまう。以上のような理由により、再石灰化促進溶液の開発は困難な現状である。
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