日本における顎骨骨折は、交通事故やスポーツ外傷等による外傷性骨折が圧倒的に多い。とくに交通事故による外傷性顎骨骨折では、骨折部位が眼や脳などの重要臓器に近接しているだけでなく、その周辺には太い血管系や重要な神経系が走っているために、損傷が小さくても形態的・機能的障害を有する場合が多く、しかもそれは局所のみならず、全身に波及している場合もある。以下に、顎骨骨折で見られる症状を列挙する。
(1)全身症状・・・意識喪失、呼吸困難(血腫、炎症性浮腫、顎骨偏位による舌根沈下)、ショック
(2)顎部の症状
・骨折部の症状・・・腫脹、疼痛、異常可動性、軌轢音。
・骨折片偏位による症状・・・咬合異常、顔貌変形、気道閉塞、開閉口障害
(3)合併損傷による症状
・皮膚・粘膜症状・・・損傷、出血、内出血、眼瞼周囲の皮下出血
・眼症状・・・眼球運動障害、眼球突出・陥没、視覚障害、二重視
・顎関節症状・・・関節包・円板・靭帯の損傷、関節内血腫、脱臼
画像診断の発達により、どの部位にどの程度の損傷があるのかを的確に判断できるようになった。画像診断では、オルソ、CT、MRIなどの画像をもとに、骨折線や骨片偏位の存在を2次元あるいは3次元的に解析する。また、現病歴や臨床症状(ステップの触知、骨折部位の異常な動きや軌轢音、受傷後に生じた咬合異常や開咬など)で判断することも出来るが、画像診断が正確で確実である。
一般的な骨折の治療は、骨片の整復と固定である。これは主にチタンプレートなどを用いて、骨片を元の位置に整復して固定することである。しかし顎骨骨折の場合は、これだけでは機能的な回復を見込めない。それは、口腔という特殊な環境の中に、髪の毛1本を感知できる歯根膜感覚を有しているからで、わずかな咬合偏位が存在するだけで口腔機能が障害される。そのため、顎骨骨折における治療においては、骨片の整復と固定という骨折の治療原則の他に、咬合関係の回復という治療方針も重要な要素となる。咬合関係の回復は、顎間固定を用いて行われる。
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