炎症性疾患概要 【各論】

唾液腺疾患(唾液腺の炎症性疾患)

 

 唾液腺炎症疾患の分類

唾液腺の炎症性疾患は導管から逆行性に進入した細菌によるものと、ウイルス性のもの、その他のものの大きく3つに分類される。

 

細菌性

ウイルス性

非特異性唾液腺炎

・特異性唾液腺炎(唾液
腺結核症、放線菌症)

流行性耳下腺炎

・巨細胞性封入体症

Sjogren症候群
Mikulicz病
Heerfordt病

・慢性硬化性唾液腺炎(Kuttner腫瘍)

 

非特異性唾液腺炎

非特異性細菌が逆行性に唾液腺に侵入することで生じる唾液腺炎で、発症の背景には唾液分泌機能低下や全身機能の低下などがあるとされる。急性期の臨床症状は、唾液腺の自発痛や圧痛、腫脹、所属リンパ節の腫脹と圧痛、全身の発熱などで、開口部から排膿を認めることがある。治療法は抗生物質投与。

 

特異性唾液腺炎

特異性唾液腺炎には、唾液腺結核症と放線菌症がある。唾液腺結核症は非常に稀で、破壊性の唾液腺造影像を示す。放線菌症は主に顎放線菌症が耳下腺などの唾液腺に波及したもので、咬筋の板状硬結を伴う。唾液腺結核症と同様に破壊性の唾液腺造影像を示す。治療法は抗生物質の投与。

 

流行性耳下腺炎

ムンプスウイルス(mumpusvirus)によるウイルス性感染症。潜伏期間は約2週間で、耳下腺が両側性に腫脹する。主に小児に発生する疾患であるが、ときに大人にも感染することがあるが、重症化しやすい。また、まれに髄膜炎や膀胱炎、卵巣炎などの合併症を引き起こすことがある。多くの場合、自然消退する。

 

巨細胞性封入体症

サイトメガロウイルス(cytomegalo virus)によるウイルス性感染症。多くの場合、胎生期の唾液腺細胞内に感染する。病原性が弱いため、発症することは稀である。

 

Sjogren症候群(シェーグレン)

口腔乾燥(dry mouth)、乾燥性角結膜炎、眼乾燥(dry eye)を主症状とする自己免疫疾患で、中年以降の女性に多い。リウマチ性関節炎(RA)や多発性筋炎、全身性エリテマトーデス(SLE)などを合併することも多い(二次性Sjogren症候群)。唾液腺造影ではapple tree appearanceやbranchless fruits laden tree patternと呼ばれる特徴的な像を示す。ガム試験、サクソンテスト、Schirmer試験、rose bengal試験、血液検査(抗SS-A、抗SS-B抗体)、口唇腺生検など診断によって総合的に診断する。病理組織学的には、腺房の萎縮、末梢導管の不規則な拡張、リンパ球浸潤など特徴的な組織像を示す。治療法は主に対症療法で、人工唾液、含嗽薬など。

 

【シェーグレン症候群診断基準】 厚生労働省(1999年 改変) 
以下の項目で2項目以上の陽性所見で、シェーグレン症候群と診断する。
・口唇小唾液腺の生検組織でリンパ球浸潤を認める。
・ガム試験、サクソンテスト、唾液腺造影、シンチグラフィーなどで唾液分泌量の低下が証明される。
・Schirmer試験、rose bengal試験、蛍光色素試験などで涙液分泌低下が証明される。
・血液検査で抗SS‐A抗体あるいは抗SS‐B抗体が陽性である。

 

Mikulicz病

両側性耳下腺と涙腺の腫脹を主症状とする原因不明の疾患。以前はSjogren症候群と同一視されていた疾患であるが、好発年齢や性差のみならず唾液腺造影像などにおいても典型的なSjogren症候群と異なることから、別の疾患として扱われるようになった背景がある。臨床症状は、耳下腺の腫脹が強い割に、口腔乾燥症状は乏しい。合併症として、自己免疫性膵炎(AIP)、自己免疫性肝炎、気管支喘息アレルギー性鼻炎などの自己免疫性病変やアレルギー性疾患が挙げられ、その頻度は比較的高い。血液検査所見では、血清IgG4の上昇を示す。病理組織学的には、耳下腺組織における著しいIgG4産生形質細胞浸潤と筋上皮島の形成が認められる。治療にはステロイドが用いられ、その点においてもSjogren症候群と異なる。白血病やリンパ腫などによって生じる原因が明らかなものはMiklicz症候群と呼ばれる。

 

Heerfrdt症候群

両側耳下腺の腫脹、ブドウ膜炎、発熱を主症状とする原因不明の極めてまれな疾患。末梢顔面神経麻痺を伴うことが多い。病理組織学的所見は、唾液腺組織の内部や周囲のリンパ節中に類上皮細胞を認め、サルコイドーシスの一種と考えられている。自然治癒することが多い。

 

慢性硬化性唾液腺炎

顎下腺の無痛性腫脹を主症状とする原因不明の疾患。Kuttner腫瘍とも呼ばれる。臨床症状は唾液腺腫瘍に似た経過を示すことが多いが、病理組織学的には、そのような所見は一切なく、顎下腺周囲に線維性結合が増生し、内部には著しいリンパ球浸潤を認める。治療法は一般的に顎下腺の摘出であるが、自然治癒する場合もある。

 

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