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7 松田 康裕先生:再石灰化、遺伝子多型

7 松田 康裕先生:再石灰化、遺伝子多型

■ 経歴等


出身大学:
九州工業大学 情報工学部 生物化学システム工学科 1995年卒
北海道医療大学 歯学部 2001年卒


出身大学院:
北海道大学大学院歯学研究科 口腔医学専攻 博士課程


留学先:
南カリフォルニア大学 医学部/移植免疫研究所 リサーチフェロー
USC Metic Transplantation Laboratory/ USC Keck School of Medicine



■ 現在の肩書:


北海道医療大学 歯学部 齲蝕制御治療学分野 講師
日本歯科保存学会 認定医



■ 研究キーワード


再石灰化、う蝕、微量元素、ナノコンポジット、個体差、遺伝子多型



■ 研究に関する概要


バイオミネラリゼーションによる歯の再石灰化
微量元素を応用したバイオアクティブ材料の開発


近年う蝕は減少傾向にありますが高齢者の根面う蝕は増加しており,根面う蝕の予防及び再石灰化がこれからの課題の一つです. 根面う蝕では,ハイドロキシアパタイトの脱灰だけでなく、コラーゲン繊維の劣化が同時に生じます.

バイオミネラリゼーションとは生体制御による生石灰化のことで、構造タンパク質が足場となり方向性のある結晶の石灰化を誘導します。現在、このバイオミネラリゼーション・メカニズムに基づく高齢者のう蝕予防・治療法の開発が行われており,従来のフッ素によるう蝕石灰化に加えて、コラーゲンの保護に注目した生物学的な石灰化により,さらに効果的な根面う蝕の予防,再石灰化が可能ではないかと考えております.

口腔内のバイオミネラリゼーションにおいて鍵と考えられるのが生体内の微量元素です.例えばZn,Cuにはコラーゲンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害作用の他に抗菌作用もあり,またF,Srには再石灰化促進作用があります.すでにF,Zn,Cuを複合させたナノ微粒子(微量元素ナノコンポジット)を開発に成功し,その作用の研究を行っております。

今後はさらに様々な微量元素の相互作用を詳細に調べて,より適切な微量元素ナノコンポジットを開発し,将来的には象牙質や骨の再生が可能な覆髄剤や骨補填材への応用を目指しています.

これまで、微量元素の分析を行うため,口腔内の動的イオン変化をシミュレーションできる自動pHサイクル装置、さらには歯質に含まれるフッ素などの軽元素を含めた微量元素を大気圧中で高感度に分布分的,定量分析が可能なin-Air µPIGE/PIXE解析法などを用いて研究を進めてきました.



う蝕感受性の遺伝子解析

MMPやコラーゲンの他にカーボニックアンヒドラーゼやいくつかの遺伝子多型がう蝕感受性に関連していることが既に報告されています.米国留学中にはSequence specific primer (PCR-SSP)方やHigh Resolution Melt Analysis(HRMA)分析方法を用いてHLAのタイピングやBKウイルスの遺伝子多型のスクリーニング及び定量分析を行ってきました.このようなPharmaco genomicsの手法も応用しう蝕感受性の個体差についても研究を進めていきたいと思っています.



■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと


大学で日中は診療行い,時に臨床実習として学生と共に治療を行っています。その時に学生に診断は何か?どのような治療方針で進むか?口頭試問を行いますが,必ずその後で「どうして?」とその理由を聞いています.彼ら自分自身が考えた「根拠」をもった診断,治療を行うようになって欲しいからです.

学生時代に講義で習ったことがすべてではないというのが現実で、例えば,国家試験ではⅡ級のグラスアイオノマーセメント(GIC)は適応外ですが,実際にはコンポジットレジンと比較して2次う蝕が生じにくいことが臨床研究の分析で報告されています.

様々な研究論文,メタアナリシス,ガイドラインが日々アップデートされています.そして,それぞれに相反する研究論文もあります.それぞれの見解を踏まえて,日常の診療で行っている治療が,その患者さんにとって本当にベストの治療なのか,その疑問に答えを持つ治療を行っていただければと思います.

根拠に基づいた診療は今まで気付かなかった発見や意外な症例を見いだす可能性高く,またそれは今後の歯科医療の研究、そして新しい治療へのSeedになると信じているからです.



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2020年06月01日

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