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6 野原 幹司 洋平先生:構音障害、嚥下障害

6 野原 幹司 洋平先生:構音障害、嚥下障害

■ 経歴等


出身大学:大阪大学歯学部歯学科 卒(1997)
出身大学院:大阪大学大学院歯学研究科 修了(2001)



■ 現在の肩書:


・大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室 准教授

■ 研究キーワード


構音障害、嚥下障害



■ 研究に関する概要


私は根っからの(?)臨床家であり,ここに記載する内容がアカデミアからの便りになるかは分かりませんが,とりあえず私がこれまで取り組んできた研究内容を紹介させて頂こうと思います.

学部卒業以来,私が四半世紀にわたって属しているのが大阪大学大学院歯学研究科の顎口腔機能治療学教室(通称「顎治」)です.阪大以外にも顎口腔機能治療学教室(部)がありますが,教室名は一緒でもやっていることはバラバラで,阪大の顎治は口腔の機能障害の治療全般を担う部門として1973年に設立されたところです.機能障害の治療を目的としていますので,そのためには手段を選ばず,補綴,リハビリ,内科的治療から全身麻酔の手術まで幅広いアプローチを行っています.そんな中で私が特に専門としているのは構音障害と嚥下障害の治療であり,研究もその両者に関係するものがメインです.

今回は嚥下障害に関する研究を紹介します.
いろいろ幅広く研究をしていますが,その根底には「誤嚥性肺炎・低栄養をいかに予防するか」という大きな目標があります.

①万嚥下計の開発
歩行の筋力を保つためには「歩くこと」が廃用予防になり,そのために「何歩歩いたか」を計測する「万歩計®」があります.嚥下も同様,嚥下関連の筋力を保つためには嚥下をすることが重要ですが「何回嚥下したか」を計測するツールがありませんでした.そこで顎治では「万嚥下計」を開発し,高齢者の嚥下障害予防に取り入れています

②食塊形成機能の評価法の開発
咀嚼機能の評価法にはグミゼリーやガムがありますが,それらの評価は試料を口腔外に出して計測するため嚥下するための「食塊」を評価したことにはなりません.また,試料を口腔外に出すことを意識すると自然な咀嚼動作が妨げられます.そこで顎治では嚥下内視鏡を用いて「咽頭に流れてきた嚥下直前の食塊を直接観察する」という食塊形成の評価法を開発しました.

③薬剤性嚥下障害の実態調査
高齢者のポリファーマシー(多剤服用)が問題となっています.歯科の立場からもポリファーマシーの改善に取り組む必要があると考え,在宅嚥下障害患者さんの服薬状況を調査し,嚥下障害との関連を明らかにすべく研究を行っています.歯科から処方医に対して「この薬剤は嚥下障害の原因になっているので中止してください」と(堂々と?)言えるようになればと思いながら研究を進めています.

⑤その他
高齢者の嗅覚障害と低栄養との関連調査,誤嚥と胸部CT像との関連調査,気道繊毛運動と肺炎発症との関連調査,嚥下時の舌骨運動速度の解析なども行っています.

「歯科らしくない」と思われる研究もあるかもしれません.
既存の歯科を専門分化することも大事だと思いますが,歯科の分野を広げることも重要な大学の役割だと思っています.その理念に基づいて「歯科臨床の幅を広げるため」の歯科研究をこれからも進めていきたいと思います.



■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと


先生方が日々の臨床をされていて感じられているように,歯科ってすごく魅力があり,やりがいのある診療科です.その事実は疑いありません.しかし,その割には社会や他職種からの評価があまり高くないと感じておられる先生も多いのではないでしょうか…?

その現状を打破するには歯科はやるべき柱が2つあると思っています.

一つは「歯科医療の最先端を極めること」です.
再生医療や歯科医療機器の研究・開発を通じて,最先端の歯科治療・ケアを患者さんに届けることです.こちらはよくスポットが当たり,歯科にとって華やかな分野かもしれません.阪大の学生も多くが歯科医療の最先端を目指します.

でも,もう一つすべきこと,
それは「医療のど真ん中で堂々と勝負すること」だと思います.
歯科医療従事者だけで完結する歯科医療ではなく,医療というフィールドのど真ん中で,医師・看護師・セラピスト・栄養士・介護士等々と対等に意見し合い,目の前の患者さんに最高の医療を提供することです.
この2本柱はどちらが欠けてもいけません.

後者の柱に取り組まれる先生方の武器・自信になるような研究・臨床を顎治は続けていきたいと思っています.



野原 幹司先生の業績はこちら

2020年05月29日

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