■ 【質問】
整形外科分野では体内インプラントの細菌や真菌による汚染が問題となり、地元の整形外科病院においても、患者さんに対して術前に口腔清掃や歯周病治療を受けることを喚起する紹介状を持って来院します。自分も昨年骨折して抜釘するかしまいかを主治医に相談すると歯周病菌の感染を指摘されました。そのような経験より、歯科インプラントを振りかえれば大丈夫だろうかという疑問がわきました。実際のところを専門の先生にお伺いしてそのへんのことを詳しくお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
■ 【回答】
「整形外科分野では体内インプラントの細菌や真菌による汚染が問題となり、地元の整形外科病院でも患者さんが手術前に口腔清掃や歯周病治療を受けることを喚起する紹介状を持って来院します。」
これについては、おそらく術前・術中・術後における口腔細菌からの菌血症や術後の誤嚥性肺炎などを危惧されていると思います(OralStudio補足:周術期管理の観点より)。
しかしながらこれは天然歯でも同じであり、以前から重要視されてきています。近年では周術期の口腔ケアとして大学病院などでは必ず行われており,歯科インプラントについても同様だと思います。
科学的根拠はありませんが、インプラント周囲の硬軟組織は決して免疫不全状態でもなく(つまりインプラントだからといって、極端に免疫機構が劣っているわけではない)、体の外と中を貫通している点では天然歯と同じであることから、基本的にインプラント周囲炎に罹患していない限り、問題ないと思われます。
しかし、インプラント周囲炎に罹患している場合でこれから強い免疫抑制が必要な治療では、場合によってはインプラントの除去が推奨される場合もあるかと思います。
■ 【回答者】
黒嶋 伸一郎先生長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・准教授
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