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10 佐藤 真理先生:骨代謝学、血液学、代謝学

 10 佐藤 真理先生:骨代謝学、血液学、代謝学

■ 経歴等


出身大学:
北海道大学歯学部(2005年卒業)


出身大学院:
北海道大学大学院歯学研究院


留学先:
Harvard Medical School, Joslin Diabetes Center



■ 現在の肩書:


北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 口腔分子生化学教室 准教授



■ 研究キーワード


歯科医学、骨代謝学、血液学、代謝学



■ 研究に関する概要


人の体は深く創造性に富んでいます。
私は、歯から、骨から、血液から、代謝から、生化学を基本として様々な角度から体と生命を理解しようとしています。驚くのは、知れば知るほど自分の体が謎だらけだと再発見することです。一番身近なミステリーである自分の体を理解して、病気の予防や治療を新しい観点から提案すべく研究をしています。



■ 今までの主な研究成果


WntとBMPのダブルシグナル効果で骨が強くなる:
大学院時代に骨芽細胞を使ったOPG遺伝子プロモーター解析実験を行い、WntシグナルとBMPシグナルが協調して骨芽細胞のOPG遺伝子発現を制御することで骨代謝を正に制御していることを明らかにしました。

骨に埋め込まれた骨細胞はリンパ球を育て脂肪の量を調節する:
大学院卒業後に神戸大学医学部血液内科学教室にて、骨と造血についての研究を行いました。重力や運動刺激を感じる骨細胞と、骨髄でのBリンパ球造血および胸腺でのTリンパ球造血のつながりを明らかにしました。さらに骨細胞が脳刺激を介して脂肪萎縮症(リポジストロフィー)と脂肪肝の発症に関わることを明らかにしました。

脂肪組織は光受容体で光を感知し全身の代謝を上げる:
2015年から2年間、サンスター財団の助成を受けてハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病研究所にて、いわゆる”善玉の脂肪組織”である褐色脂肪の研究を行いました。皮膚直下に存在する褐色脂肪は光受容体を持ち、その光受容体を使って光を感知することでミトコンドリアを活性化して全身の代謝を活発にすることを明らかにしました。



■ 今後の展望


これまで歯科にとらわれず、様々な研究室で様々な研究をしてきました。自分以外に歯科医師がいない研究室で、血液内科医や代謝内科医らと研究を行うことは新鮮な反面、心細いこともありました。

そんな時に色々な面から私を支えてくれたのは出身医局である北大、小児・障害者歯科学教室の先生方、兵庫県の開業歯科医師の先生方、アメリカ・ボストンの歯科医師の留学仲間、バッファロー大、ノースカロライナ大のアメリカ人歯科医師の先生方でした。自身の”歯科医師”というバックグラウンドを強く意識し、誇りに思えたのはこれらの歯科医師の先生方のおかげです。感謝と恩返しのためにも、今後は骨代謝・血液・代謝学をベースにして、歯科医学(とりわけ小児歯科学)に貢献できるような基礎研究に従事したいと考えています。



■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと


日本とアメリカの医学部で研究をして感じたのは、医学では”基礎研究”と”臨床”の距離がとても近いということでした。基礎研究なくして臨床と治療はありえず、逆に臨床なくして基礎研究は成り立ちません。

本来は歯科医学もそうなのですが、基礎研究が臨床にダイレクトにつながる機会が医学にくらべて少ないことからか、基礎研究と臨床の距離が少々離れていると感じます。もったいないことです。臨床も基礎研究もとても面白くつながっているからです。
私自身で言えば、兵庫県西宮市の歯科医院で非常勤として働いていた時に、臨床での「なぜ?」「どうして?」を日々目の当たりにしたことが現在の研究モチベーションに深くつながっています。

若い先生方は、広い視野を持って様々な環境や分野に飛び込み経験を積んで頂きたいです。ベテランの先生方は、これまでの経験を活かした偏りのないリベラルな心で、臨床と研究をつなぐための何らかの夢を持ち続けて頂きたいと思います。



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2020年06月30日

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