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5 星加 修平 洋平先生:歯質接着、口腔内細菌叢

5 星加 修平 洋平先生:歯質接着、口腔内細菌叢

■ 経歴等


出身大学:北海道大学歯学部卒業(2005)
出身大学院:北海道大学大学院歯学研究科博士課程 卒業
留学先:Leuven Katholic University: visiting researcher(2010/10月-2012/10月)
Queen Marry University of London: visiting research fellow (2013/4月-7月)



■ 現在の肩書:


・北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学講座 歯科保存学教室 助教
・日本歯科保存学会認定医

■ 研究キーワード


歯質接着、歯質再石灰化、口腔内細菌叢、口腔内清掃



■ 研究に関する概要


私はこれまで主に象牙質とコンポジットレジンとの接着について研究をおこなってきました。

大学院時代に、抗酸化剤である白金ナノコロイド(CPN)が4META/MMA-TBBレジンシステムの接着性能を向上させることを発表し、サンメディカル社と共に特許を取得しました。
CPNによる前処理で、レジンタグが長く、数が密になり、接着強さが倍増しました。要因としては重合率の増加を考えましたが、重合率を測定した際に差がなかったので、表面の濡れ性の向上、モノマーの象牙細管内への浸透性の向上などが考えられます。

その後ベルギーのルーベンカトリック大学で2年間、イギリスのクイーンマリー大学で3ヶ月間、歯質接着について研究を進めました。

帰国後、グラスアイオノマーセメント(GIC)と象牙質の接着界面の研究をおこなっています。電子顕微鏡で観察すると、表面処理をしなくても、GIC自体に歯質脱灰作用があるため、GICと歯質が接着している像が観察されます。ポリアクリル酸処理をすると、gel phaseが生成され長期耐久性に寄与している可能性があると考えています。歯質との接着界面の微小引っ張り試験、SEM観察、TEM観察、XPS、STEMによる元素分析などを用いて分析をしています。

また、口腔内細菌叢に注目した研究もおこなっています。
次世代シークエンサー等解析技術の飛躍的な進歩により、口腔内細菌叢の研究はさらに発展してきており、口腔内細菌叢と腸内細菌叢との関連についての報告も多くなされるようになってきました。

口腔内清掃と全身疾患予防について、本学先端生命科学研究院、ならびに口腔分子微生物学教室にご協力いただき、細菌叢を用いて解析し始めています。



■ 今後の展望


今までの卓越した研究開発により、象牙質とコンポジットレジンの接着は既に望ましいレベルまで達したため、今後は既存の材料にバイオアクティブ性や自己修復能を持たせることが発展していくと考えています。

バイオアクティブ性には抗菌性と再石灰化作用がありますが、バイオアクティブグラスを添加することでそれらの効果を獲得させることや、光化学、破折、湿度等をトリガーに自己修復させることなどです。

コンポジットレジンは生体為害性がないため基本的に覆髄は必要ないという流れになっていますが、光照射器からの高い熱による歯髄へのダメージや、GICの優れた封鎖性、レジリエンス、残存した齲蝕象牙質に対するフッ素除放による再石灰化促進作用などを考えると、歯髄保護の意味でGICなどによる間接覆髄はまだまだ需要があると考えます。GIC、バイオアクティブグラスと象牙質との接着に関する研究は継続していきたいと思います。

口腔内細菌叢に関しては、腸内細菌叢との強い関係性が今後さらに明らかになっていきます。口腔内清掃が全身疾患予防に対して極めて重要であるということを明らかにしていきたいと思っています。
医科歯科連携が進む中、今後さらに歯科の枠組みを取り払い、他分野連携、他業種連携と進んで行くのが楽しみです。



■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと


私は勤務時間をほぼ診療に費やしています。
しかし大学所属の歯科医師として、研究をするべきという、ある種の使命感で研究に取り組んでいましたが、歯科を進歩させるために研究が必要という自発的な捉え方に変わってきました。

アカデミアだから、臨床家だから、という2項対立ではなく、診療で直面する臨床的アイデア、疑問を共有して研究をコラボレーションしていければ歯科の進歩のスピードが上がっていくと考えています。

アカデミアは研究によりエビデンスを作ることが仕事ですが、エビデンス至上主義には否定的です。ある意見の論文に、それと正反対の意見の論文があるということが実は多くあります。細かい部分に囚われるのではなく俯瞰して考えることが大切です。目の前の患者さんにとって、医療界にとって何が大切なのか、という視点です。

臨床家、アカデミアを巻き込んで、バランス良く歯科を進歩させることをミッションとして頑張りますので、皆さんご協力のほどよろしくお願いいたします。



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2020年05月26日

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